理髪師の井戸〜新館〜

日本史と郷土史が繋がった瞬間と、通史の舞台裏

2022-01-01から1年間の記事一覧

中央町から舟見町へ

22/4/5本館掲載記事を大幅修正の上、転載 新しい図書館が出来たことで、近所であるこの辺りがごく身近に感じられるようになった。 図書館で調べ物をした後、南、すなわち海の方へ足を向ける。絵になる風景が多くて、暖かくなり、天気の良い日と休日が重なれ…

昭和十七年七月十二日の東條英機

21/7/8の本館掲載記事を全面的に加筆修正の上、転載。 東條英機という人について考える時、資質とそれに与えられる地位という命題が、いつも無意識のうちに傍らに置かれる。 彼が首相でなければ、死なずに済んだ者も数多あったかもしれないし、自身も刑死後…

「父だから」にあらず

ある人物の伝記を著す場合、その人物が歴史の中で果たした役割、言わば公的な側面だけでなく、私人としての側面まで描いてはじめて一人の人間を描き切ったと言えるのではないか。 もっともこれはあくまで私個人の好き嫌いの問題に過ぎない。 ただ、歴史上の…

御前水の軍神

21/5/4の「本館」記事を修正の上、転載。 日本製鋼所は、室蘭市茶津町が創業の地である。火入れは、明治四十(1907)年五月五日であった。『新室蘭市史』によると、この日が選ばれたのは、菖蒲の日が、語呂的に尚武に通じるからだという。 日本初の民間兵器…

日向は三度(みたび)

今日がその日であることを失念していたため、白鳥大橋を運転していて足元の巨大な艦体に驚いた。 二十九日、海自のヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」が室蘭市の祝津埠頭に入港、三十日と三十一日の両日、一般公開された。 何に関しても説明の労を惜しむ街…

一冊の‘記念碑’

赤谷正樹氏の『まち歩き 札幌の歴史』がこのほど刊行された。 著者は、かつて札幌市民ならその青い表紙を知らぬ人のない「さっぽろ文庫」シリーズの編集に携わった後、カルチャースクールの「札幌歴史散策」講師として、歴史や思い出を切り口に札幌の魅力を…

作家の胆振旅

楽天ブログ「本館」の記事を、加筆修正の上、転載。 昨年の大学入学共通テストでその作品「羽織と時計」が出題されたことから、大正から昭和初期にかけて活躍した作家、加能作次郎がちょっとした話題になったことがあった。 その小品随筆集『このわた集」に…

吉田一彦氏の思い出

今年の春、情報学者で、諜報に関する書を数多く著した吉田一彦氏(神戸大学名誉教授)が亡くなられた。氏には、仕事を通じてお付き合いいただいた。以下の記事は、楽天ブログ本館20/9/25「歴史家のおしゃべり」から抜粋、若干の手直しを加えたものである。楽…

今も入居中

この日札幌なる向井君より北門新報校正係に口ありとのたより来る。 石川啄木は明治四十年(1907年)九月八日の日誌に記している。 この年の五月に渡道した啄木は、函館で小学校の代用教員の職を得、次いで函館日日新聞の記者に転じた。 彼ほど安定と縁遠い…

古松軒と鬼熊

楽天ブログ「本館」20/11/20記事の転載です。 江戸時代、諸国の私領の施政や民情を視察する幕府の巡見使は、将軍の代替わりごとに派遣される。十一代家斉襲職の時のそれは天明八(1788)年に全国へ差し向けられ、うち陸奥、出羽、松前に向かう一行が江戸を出…

浦川場所の羆退治

楽天ブログの本館21/12/23の記事を一部訂正の上、転載。 南畝こと太田直次郎といえば、 「世の中に 蚊ほどうるさきものはなし ぶんぶといひて 夜もねられず」 「白河の 水の清きに棲み兼ねて 元の濁りの 田沼恋しき」 という、寛政改革を揶揄する狂歌で知ら…

金四郎が来た

楽天ブログ「本館」の21/1/1記事の転載です。 ここで取り上げるのは、遠山金四郎が幕府蝦夷地御用掛の東蝦夷地巡見に随行した折の日記である。 だから、本来ならば、題名を‘金さんが来た’としたかった。が、この金四郎をもって‘金さん’としてしまうと、誤解…

お座なりで済ますな

十代将軍家治の下で並ぶ者なき権勢を誇った老中田沼意次の嫡男で若年寄の田沼意知が、江戸城中で斬殺されたのは天明四年(1784)三月二十四日のことである。 意知は、八つ時(午後二時)前の退出の節、通りがかった新番所から走り出てきた番士の佐野善左衛…

本館・新着記事のお知らせ

楽天ブログの「理髪師の井戸」本館に、「孤独の‘室蘭’グルメ」をアップしました。https://plaza.rakuten.co.jp/toyohara/diary/202207090000/

オヒルネップ異国船打払始末

楽天ブログ本館の21/5/13記事の転載。 天保二(1831)年といえば、孝明帝がお生まれになった年である。前の年には水戸斉昭が襲封している。また、西郷隆盛が鹿児島城下の加治屋町で産声を上げたのは三年前のことである。 何が言いたいかといえば、水野忠邦の…

名告らぬ碑(いしぶみ)

22年5月22日に楽天ブログ本館記事の転載です。7月5日アップの「原点の人」の姉妹編的な内容になっています。 沢町にある満冏(まんけい)寺は、文久二(1862)年八月に室蘭村に開かれた本室蘭説教所を濫觴とし、明治六(1873)年の札幌本道開削を機に現在の…

原点の人

※フォントサイズが途中から変わります。操作に習熟しておらず、修正できません。御容赦を。 今や入手困難な一冊である。しかし、買うことも読むことも不可能というわけではない。 好川之範『幕末の密使』のことである。以前より読みたいと思っていながら、先…

開館のご挨拶

「理髪師の井戸」は、これまで楽天ブログ内で記事を掲載してきた日記です。種々事情や考えがあり、この度、はてなブログに「新館」を設けることとなりました。私は日本、そして現在住んでいる北海道室蘭市の歴史について調べることが何よりの道楽で、その成…