十代将軍家治の下で並ぶ者なき権勢を誇った老中田沼意次の嫡男で若年寄の田沼意知が、江戸城中で斬殺されたのは天明四年(1784)三月二十四日のことである。 意知は、八つ時(午後二時)前の退出の節、通りがかった新番所から走り出てきた番士の佐野善左衛…
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