理髪師の井戸〜新館〜

日本史と郷土史が繋がった瞬間と、通史の舞台裏

日本史

「父だから」にあらず

ある人物の伝記を著す場合、その人物が歴史の中で果たした役割、言わば公的な側面だけでなく、私人としての側面まで描いてはじめて一人の人間を描き切ったと言えるのではないか。 もっともこれはあくまで私個人の好き嫌いの問題に過ぎない。 ただ、歴史上の…

お座なりで済ますな

十代将軍家治の下で並ぶ者なき権勢を誇った老中田沼意次の嫡男で若年寄の田沼意知が、江戸城中で斬殺されたのは天明四年(1784)三月二十四日のことである。 意知は、八つ時(午後二時)前の退出の節、通りがかった新番所から走り出てきた番士の佐野善左衛…